vol.649【実践コラム】上手くいく創業について

…事業存続の鍵は2回目の融資にあります。

(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広

創業・起業時の資金調達手段として最もポピュラーなのは、日本政策金融公庫の創業融資や信用保証協会の創業保証です。一定の要件を満たせば誰でも利用できる制度であり、創業・起業時の資金調達環境は比較的整っていると感じます。

しかし、創業融資を受けて無事に開業できても、事業を継続し成長させていくのは容易ではありません。廃業してしまう事業者と長期的に存続できる事業者の違いはどこにあるのでしょうか。長年の経験から、事業の存続と成長の鍵は、創業融資の次、2回目の融資を受けられるかどうかだと感じます。

2回目の融資を受けられる時期は、1期目ないし2期目の決算が終わった辺りですが、2回目からの融資は、創業融資のように要件の充足ではなく、業績(実績)が重視されます。

2回目の融資で最も重視される業績は売上です。創業して1年ないし2年が経っても一定の売上が立たない場合は、経営者の実力が不足している、もしくは提供している商品やサービスが市場から必要とされていないと考えられます。よって、2回目の融資を受けるためには売上が必須です。売上が立てば、一般的には月商の2カ月程度の融資を受けられる可能性が出てきます。

売上が立ったけれど赤字の場合はどうでしょうか。赤字の額にもよりますが、赤字だからといって絶対に融資を受けられない訳ではありません。損益分岐点に届かなかったため赤字だが、融資金によって損益分岐点を超える売上を獲得できると判断できれば融資をしてもらえるはずです。

創業時にありがちなミステイクの一つは、本当は利益が出ているのに納税を嫌って意図的に業績の悪い決算にすることです。決算内容を悪くすることで、2回目の融資を断られたり、融資額が少額に留まってしまうと、攻める経営ができない⇒低成長⇒さらに融資も出なくなる、という悪循環に陥り、事業の拡大どころか段々と資金が細り遂には廃業ということになりかねません。

一方、納税を受け入れて利益をしっかり出した企業は、2回目のファイナンスにより事業を成長させることができ、その成長が更に大きな融資を呼び込みます。1期目もしくは2期目の決算処理を誤ることで、その後の姿が大きく変わるので気をつけてください。

創業・起業された方は、最初の目標を「2回目の融資を受ける事」に設定することで生き残れる可能性がぐんと高まります。2回目の融資を受けるために必要なことをひとつひとつ学んでいきましょう。

このアプローチは、単に事業を存続させるだけでなく、持続的な成長を実現するための重要な戦略となります。2回目の融資獲得に向けて計画的に事業を運営することが、財務基盤の強化、経営スキルの向上、そして市場での競争力強化につながります。これらの要素が相まって、長期的な事業の成功確率を高めることができます。

尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)