vol.610【経営コラム】規模拡大ではなく、企業価値を向上させる施策を!
…企業価値を向上させるための4つのポイント!
(毎週月曜日配信)経営編
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司
同じ利益額でも利益率の高い会社、同じ売上高でも継続的な売上比率の高い会社、事業用資産の小さな会社、成長性の高い分野の事業を行う会社は、企業価値が高くなります。企業価値を向上させるための要諦について解説いたします。
■1.脱・売上至上主義!
- 売上の大きさではなく利益の大きさが重要
- 同じ利益なら、売上は小さいほうが良い
売上には高品質な売上と安物の売上があります。企業価値は売上の純度に相関します。売上の純度が高い企業ほど、その企業価値は高くなります。売上の純度を高める経営、純度の低い売上を取り除く経営を行ってください。企業価値が向上します。
■2.売り切りから継続販売、継続的なサービス提供へ!
- 所有から利用へ、顧客ニーズは変わってきた
- 一過性の売上より、継続する売上の方が良い
顧客ニーズは、所有から利用へと変わってきました。経営的にも、売切りの一過性の売上よりも、継続的な売上の方が安定します。また、継続的に利用してもらうためには、商品やサービスに進化・発展が求められます。継続的な集金モデルを有する企業には、それに相当する企業価値が与えられます。
近年会社の業績を表す指標にARRを使う企業が増えてきました。この指標は売上や利益の安定度を示しています。
※ARRとは「Annual Recurring Revenue(アニュアル・リカーリング・レベニュー)」の頭文字を取った言葉であり、日本語に訳すと「年間経常収益」を意味するビジネス用語です。毎年、決まって得られる収益・売上をさします。
■3.持たざる経営への移行!
- 総資産の大きさではなく純資産の大きさが重要
- 事業用の資産は小さい方が、企業価値が高くなる
※代表的な企業価値算定法であるEBITDAマルチプル法では、事業用の資産と事業用負債を除外した上で借入金を差し引いたネットキャッシュを現時点の株主価値と評価します。
- 同じ利益なら、従業員は少ない方が良い
- 同じ費用総額なら、固定費は小さく、変動費が大きい方が良い
資産には価値ある資産とそうでない資産があります。企業価値は資産の純度に相関します。資産の純度が高い企業ほど、その企業価値は高くなります。資産の純度を高める経営、純度の低い資産を持たない経営を行ってください。企業価値が向上します。また、事業用資産の小さい企業は、生み出すキャッシュフローが相対的に増えるので企業価値が高くなります。
■4.良い事業立地を選定する!
- どこにでもある事業ではなく、レアな事業を行う方が良い
- 飽和した成熟市場を攻めるより、成長性のある市場の方が良い
- 相対的優位に立てる市場が面白い
事業は、いかに上手に運営するか(マネージメント)の前に、どんな事業をするか(事業立地の選定)が重要です。取り組む事業を間違えたら、経営の成果、企業の価値向上は限定的です。
企業価値を高くとるためには、事業立地の選定が重要です。
企業の規模ではなく、企業の価値に重点を置いた経営に移行しませんか。そのためにも、事業計画書を作って、又は、作り直してみませんか。今から作る事業計画書は、【規模拡大を目指す計画書】ではなく、【企業価値を向上させる計画書】にしてください。
田中英司 (GPC-Tax本部会長・ 銀行融資プランナー協会代表理事)