vol.591【実践コラム】中小企業の財務について(その2)
…中小企業の資金繰り戦略: 試算表から資金繰り表へ
(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広
前回のコラムで、中小企業における財務管理の出発点は試算表の作成であることを強調しました。しかし、試算表だけを頼りにしても十分な管理とは言えません。試算表にはキャッシュフローに関する情報が不足しているという弱点があります。
赤字であっても、すぐに破綻することはありませんが、資金が底をつくと利益があっても経営が困難になります。したがって、利益の管理よりも資金繰り管理の方が中小企業においては極めて重要です。そして、資金繰りの管理を行うための貴重なツールが「資金繰り表」です。資金繰り表は、毎月の入金と支出を詳細に記録したシンプルな文書ですが、財務管理において非常に有用です。
ほとんどの中小企業経営者は、何らかの形で資金繰り表を使用していると思われます。たとえ資金繰り表を具体的に作成していなくても、頭の中には収入と支出の大まかなイメージがあるはずです。ただし、残念ながら、多くの経営者は短期間の資金繰り計画しか持っておらず、数週間や数か月先までしか資金繰りの見通しを立てていないことが実態と言えるでしょう。
短期的な資金繰り計画に依存することは、資金が不足する可能性に対処するために十分な時間を確保できないことを意味します。経営者が他の重要な業務を削減してまで急いで資金を調達しなければならない事態が発生します。これは計画性の欠如による財務活動です。
計画的な財務活動を実現するために、長期の「資金繰り計画」を策定しましょう。1年間の資金繰り計画を作成し、資金の流れを予測しながら、資金調達や設備投資などの計画を立てるのが理想です。1年後の売上などを正確に予測することは難しいかもしれませんが、過去1年間の「資金繰り実績」を分析してみましょう。これにより、過去の売上の傾向から未来の資金繰りを予測する手助けができるはずです。
財務管理の最終的な目標は、「資金不足を回避すること」です。試算表を活用して利益を管理し、資金繰り表を通じて計画的な資金調達や設備投資を行えば、資金不足に陥ることなく、経営に専念する余裕を持つことができます。中長期の資金繰り計画を有していない経営者は、今年からその作成に取り組むことをお勧めします。
尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)