vol.588【経営コラム】ブランド戦略とは何か!(その4)

…ブランドはエクイティ(資産)です。

(毎週月曜日配信)経営編
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司

…前回号のつづきです。

デービッド・A. アーカーによるブランドエクイティの概念は、マーケティング理論とビジネス戦略における革新的な偉業と言えます。それまで多くの企業がブランドを単なる名前やロゴとして捉えていたのに対し、アーカーはブランドを価値のある資産、すなわちエクイティとして考えるべきだと提唱しました。

彼のブランドエクイティモデルは、ブランド認知度、ブランド忠誠度、ブランド連想、知覚品質、そしてその他の所有資産の5つの主要な成分を包含します。これらの構成要素が全て揃うと、ブランドは単なる製品やサービスを超えて、消費者の心に強い影響を及ぼし、競争優位性を生み出し、価値ある資産となるのです。

アーカーのブランドエクイティの概念は、ビジネスリーダーに対してブランドが企業にとってただの名前やロゴ以上のものであるという認識を広めました。ブランドは企業の成長と競争力における重要な役割を果たし、それに投資することは企業の財務的な成功に直接寄与するという考え方が、彼の理論により広まったのです。

その結果、ブランドの価値を定量的に評価し、その構築と管理に対する戦略的なアプローチが生まれました。これにより企業は、ブランドの価値を最大化し、顧客との深い関係を築くための具体的な方向性を見つけることができるようになりました。このアーカーの業績は、現代のブランドマネジメントとマーケティング戦略に深く影響を与えています。

中小企業がアーカーのブランドエクイティモデルに基づいて行動する際の具体的なステップについて言及します。

◆1. ブランド認知度を高める

中小企業にとって最初のステップは、自社のブランドを可能な限り多くの消費者に認知させることです。広告、パブリシティ、ソーシャルメディア活動などを通じて、企業の名前とロゴ、サービス内容の広報を続けることが必要です。

◆2. ブランド忠誠度を構築する

次に、消費者が自社のブランドを何度も選び、競合他社に流れないようにするための戦略を立てます。これは優れた製品やサービスの提供、優れたカスタマーサービス、顧客満足度の追求、リピート購入のインセンティブ(ポイントプログラムなど)を通じて達成できます。

◆3. ブランド連想を強化する

企業のブランドが何を表しているのか、どのような価値を提供しているのかを消費者に明確に伝えることが重要です。企業のミッション、ビジョン、価値観を明確に定義し、これを製品、サービス、コミュニケーション全てに反映させます。消費者がブランドを思い浮かべるとき、特定の品質、感情、経験を連想させるようにします。

◆4. 知覚品質を高める

製品やサービスの品質はブランドエクイティに大きな影響を与えます。品質についての優れた評価は、顧客満足度とリピート購入を促進し、口コミを通じて新たな顧客を獲得するための基盤を提供します。品質管理と改善には特別な注意が必要であり、製品やサービスが約束した価値を提供し続けることが必要です。

◆5. 所有資産を活用する

ブランドに関連する他の所有資産(特許、著作権、独自の技術やプロセスなど)を最大限に活用します。これらの資産は、ブランドの独自性を強調し、競合からの差別化を助けます。

以上のステップを踏むことで、中小企業でも強力なブランドエクイティを築き、ビジネスの成功を確保することが可能です。ただし、これらの努力は一時的なものではなく、長期的な視点と持続的な取り組みが必要です。ブランドエクイティは時間と共に育つものであり、その価値は一貫性と経験の積み重ねによって形成されます。そのため、これらの活動は経営戦略の一部として組み込むべきです。

成熟期から衰退期のステージで生き残るには明確な差別化が必要です。ブランド戦略は、この差別化を側面支援するための強力な武器です。差別化×ブランド戦略を経営の中核に据えて取り組まれることをご検討ください。

田中英司 (GPC-Tax本部会長・ 銀行融資プランナー協会代表理事)