vol.542【実践コラム】創業融資は受けるべきか
…無担保無保証の創業融資を上手に活用しましょう。
(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広
創業融資は受けた方が良いか?それとも出来るだけ自己資金で頑張る方が良いか?というご質問にお答えします。
「借金をしてまで事業をするつもりはない。自己資金で創業してダメだったら潔く事業をたたもう。」と固く誓っているならば、創業融資は受けなくてよいと思います。しかし、「まずは自己資金で頑張ろう。もしそれでダメなら融資を受けよう。」と考えているならば、今すぐに創業融資を受けた方が良いです。
■ 創業融資は創業時が一番借りやすい。
創業の殆どは計画通りにいきません。当面は赤字が続くのが一般的ですので、計画どおりに行っていない実績が露呈する前、創業直後に融資を申し込んだ方が通りやすくなります。使う使わないは別として、一番借りやすい創業時に融資を受けて手元に資金を置いておけば、計画通りに自己資金で立ち上がらなかった時の選択肢を増やすことができます。
■ 資金力があった方が新規事業は成功しやすい。
創業後に事業の継続を断念せざるを得ない最大の理由は、資金が切れてしまうことです。多くの創業者は、事業が軌道に乗るまで悪戦苦闘を強いられます。そのような状況の中で上手く行きそうな兆しが現れたとしても、その時点で資金が切れてしまえば終わりです。資金はより長く粘る時間を与えてくれますので、資金力があった方が創業は成功しやすくなります。
借入の必要性は理解できたが、どうしても借金のネガティブなイメージが拭えない方も多いと思います。借金は悪という社会的な共通認識があると感じますし、借金をしてはいけないと直接教育を受けた方もいらっしゃると思います。しかし、経営者になるなら、個人の遊興費と事業のための借入は分けて考えていただきたいです。遊ぶためにお金を借りることは当然賛成できませんが、新たな需要や雇用を生む可能性のある新規事業に挑戦するため、他人のお金を活用することは社会的にも大変有意義なことです。
国にとっても開業率は大変重要な指標であり、創業を後押しするため、日本政府も様々な施策を打ち出しています。その中で最も重要な施策は、日本政策金融公庫の創業融資が無担保無保証になったことです。
従来の創業融資は、経営者が個人保証を入れていたため、借入の必要性や経営者のマインドを理解して融資を受けたとしても、事業に失敗してしまえば個人で大きな負債を負ってしまうという事実がありました。しかし、現在は個人の保証はありませんので、事業に失敗しても個人が負債を負うことはありません。
無担保無保証制度により創業融資を利用するハードルは大きく下がりました。
上手に活用して創業を成功させましょう。
尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)