vol.518【経営コラム】日本はすでに先進国ではないのかも!

…日本の一人当たり労働生産性は、OECD加盟38カ国中28位!※IMFは、2022年は30位に下がると予測

(毎週月曜日配信)経営編
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司

少なくない日本企業の事業モデルは昭和の中期生まれです。であるにも関わらず、多くの経営者は、その事業モデルの管理の強化や改善に明け暮れています。本当に必要なのは、事業の再構築、言い換えるとイノベーション(=新・結合)です。

中小企業を含む多くの事業者が、事業モデル自体を刷新し始めた時、日本の経済は再生するのではないでしょうか。まずは、新しいビジネスの型を学び知り、自社の事業に掛け合わす【新・結合】に挑戦しませんか?

経済産業省(国)が推奨する事業再構築(補助金)は、一つの解の提案です。補助金を受ける、受けないに関わらず、その主旨で謳われている「新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築」を今こそ断行しましょう。

以下、数字で見る日本の生産性について、その事実を受け止めましょう。
〔公益財団法人日本生産性本部、労働生産性の国際比較2021年度版より引用〕

◆日本の時間当たり労働生産性は、49.5ドル。OECD加盟38カ国中23位。

  • OECDデータに基づく2020年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、49.5ドル(5,086円/購買力平価(PPP)換算)。
  • 前年と比較すると、実質ベースで+1.1%上昇している。経済が大きく落ち込む中で政策的に雇用維持をはかったことが労働生産性を下押しする要因になったが、飲食店や宿泊業、生活関連サービスなどを中心に営業時間の短縮や営業自粛の動きが広がり、全体でも労働時間短縮が進んだことが結果として労働生産性を押し上げた。
  • 日本の労働生産性は、米国(80.5ドル/8,282円)の6割(61.4%)の水準に相当し、これは1988年とほぼ同じ水準。主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いている。OECD加盟38カ国の中でも23位(2019年は21位)となり、1970年以降最も低い順位になっている。

    ※実質経済成長率(前年比-4.6%),就業者数(同-0.7%),購買力平価レート(2019年:103.63円→2020年:102.84円),労働時間(同-5.2%)

◆日本の一人当たり労働生産性は、78,655ドル。OECD加盟38カ国中28位。

  • 就業者一人当たりでみた2020年の日本の労働生産性(就業者一人当たり付加価値)は、78,655ドル(809万円/購買力平価(PPP)換算)。
  • 日本の一人当たり労働生産性は、ポーランド(79,418ドル/817万円)やエストニア(76,882ドル/791万円)といった東欧・バルト諸国と同水準となっており、西欧諸国と比較すると、労働生産性水準が比較的低い英国(94,763ドル/974万円)やスペイン(94,552ドル/972万円)にも水をあけられている。
  • 前年から実質ベースで3.9%落ち込んだこともあり、OECD加盟38カ国でみると28位(2019年は26位)と、1970年以降最も低い順位になっている。就業1時間当たりと同様、就業者一人当たりでみても、主要先進7カ国で最も低い水準となっている。

◆日本の製造業の労働生産性は、95,852ドル。OECDに加盟する主要31カ国中18位。

  • 日本の製造業の労働生産性水準(就業者一人当たり付加価値/2019年)は、95,852ドル(1,054万円/為替レート換算)。日本の労働生産性水準は、米国(148,321ドル)の65%に相当し、ドイツ(99,007ドル)をやや下回る水準。
  • OECDに加盟する主要31カ国の中でみると、18位であった。1995年及び2000年をみると主要国で最も労働生産性が高かったものの、2005年は9位、2010年は10位、2015年には17位と年を追うごとに後退している。その後順位がやや改善したものの、2018・2019年は18位になっている。

◆コロナ禍における労働生産性の動向

  • 主要国の労働生産性(2021年4~6月期)を「コロナ前」と比較すると、OECD加盟主要35カ国中19カ国でプラスとなった(実質ベース・2019年4~6月期対比)。日本は-2.8%で、35カ国中32位。
  • 米国は、2021年4~6月期の労働生産性が「コロナ前」を5.6%上回っている。しかし、足もとでは経済の正常化に伴って雇用が回復しつつあることが生産性上昇を下押しする要因になり、労働生産性上昇率が鈍化してきている。
  • 一方、英国やフランスの2021年4~6月期の労働生産性は、「コロナ前」を回復できていない。ただし、足もとをみると両国の実質経済成長率は日本を上回っており、労働生産性も前年同期を上回るようになっている。ドイツは、日本と比較的近い推移をたどってい。
  • 日本の労働生産性は、2020年後半をみると英仏より回復が先行していたが、2021年に入ってから停滞基調に転じている。2021年7~9月期の労働生産性は、前年同期を0.9%上回っている。

田中英司 (GPC-Tax本部会長・ 銀行融資プランナー協会代表理事)