vol.495【実践コラム】大手量販店との取引について
…利益率が低い取引は慎重に検討しましょう。
(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広
「大手量販店で商品を取り扱ってもらえることになりました!値段は厳しいのですが大幅な売上増が見込めます!」と喜んだ数ヶ月後、「売上高は目論見どおり伸びましたが、利益は半減、資金繰りも厳しくなってしまいました・・・」という場面に遭遇することがしばしばあります。
大手量販店との取引は魅力的ですが、たとえ相手が大手であっても、安易に価格を下げることは良い結果に繋がらないケースが多いようです。ネームバリューに惑わされず、冷静に採算を検証することをおすすめします。
原価3,000円の商品を5,000円で販売した場合と、4,000円で販売した場合を比べてみます。5,000円の場合、500個の販売で100万円の粗利益を獲得できますが、4,000円の場合は100万円の粗利益を獲得するのに1,000個の販売が必要です。同じ利益を確保するのに2倍の販売数量を要します。
冒頭の企業様は、売上高が1.5倍程度伸びたものの、従来よりも粗利益率が低下しました。また、販売数量が増えたことにより、配送コストと在庫管理のコストが増加しました。さらに、欠品が許されないと在庫を多めに抱えたため、利益が半減しただけでなく、資金繰りまで大きく悪化しました。
「売上高が大きい」「大手企業と付き合いがある」というのは必ずしもメリットばかりではありません。
- 機械化による大量生産で製造コストが下がった。
- 大量仕入れにより仕入コストが下がった。
など、しっかりとした根拠に基づく価格の引き下げであれば問題ありませんが、単に売上が増えるからというだけで価格を引き下げるのは正しくありません。
中小規模企業の場合、少ない利益で大量に販売する戦略は難しいという前提に立ち、低価格路線に安易に流れるのではなく、適正な利益を確保するよう努力するのが正解と考えます。
「大手から声がかかった!」というのは、採算が厳しいため、実は他が誰もやりたがらないのが理由かもしれません。慎重に検討してください。
尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)