vol.434【実践コラム】中小企業の財務について(その1)
…試算表を毎月作成し、どんぶり勘定から脱却しましょう。
(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広
殆どの中小企業が財務管理に改善の余地があると感じます。財務管理が弱いと、自社の財務状況を金融機関に正確かつタイムリーに伝えられないため、本来融資を受けられる業績であっても、融資を断られる場合があります。融資をスムーズに受けられなければ、成長の機会を逃したり、資金不足に陥ったりしますので、財務管理は強い方が安心です。
財務管理強化の第一歩はどんぶり勘定から脱却することです。
通帳の残高を見ながら感覚的に経営するのではなく、財務数値に基づいて経営判断を行った方が、より正確な経営判断を下すことができます。正確な財務数値を把握するために、まずは月次試算表の作成から始めましょう。試算表を見れば、キャッシュの動きだけでは分からない「利益」と「資産・負債」の状況が分かります。
どんぶり勘定が引き起こす代表的な事例は以下となります。
■ 実は赤字だが資金繰りが回っているため気がつかない。
本当は赤字に気づいているのかもしれませんが、赤字を直視しないことによって対策が遅れます。赤字を改善する努力を行わず、借入で資金繰りをごまかすことを優先し続けると、必ず最後に資金が行き詰ります。
■ 無駄な資金繰りに時間を費やしている。
取引条件によっては黒字でも資金繰りが苦しくなります。黒字ですので融資を容易に受けることができ、資金繰りの苦労からも簡単に解放されますが、それに気づかず資金繰りに多大な労力をかけています。
■ 融資を受けられるタイミングを逃している。
本当によくあるケースですが、6か月前なら融資を受けられたというケースです。融資はいつでも受けられる訳ではありませんので、財務状況をタイムリーに管理し、一番借りやすい時に借りておくのが鉄則です。資金が必要なのに融資を断られて困っている企業様の半数は、過去に資金調達のタイミングを逃しています。
他にもたくさん事例はございますが、お伝えしたいのは、「試算表」を毎月作成することの重要性です。試算表は、あらゆる経営判断を下す根拠となるものですので、財務管理を強化するための第一歩として、試算表を毎月作成することからスタートしてください。
尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)