vol.432【実践コラム】試算表の提出について

…金融機関との最良なコミュニケーションツールです。

(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広

コロナ融資を受けた企業様は、その後の業績確認のため、試算表の提出を求められ始めているのではないでしょうか。

ある関与先様から、「金融機関から試算表の提出を求められたが、融資金の一部を個人的な支出に充ててしまっているため提出したくない。断ることはできないか?」というご質問がありました。

試算表の提出を拒んだからと言って融資金を引き上げられたりすることはもちろんありません。しかし、提出を拒むことにポジティブな理由はありませんので、金融機関の担当者はネガティブに捉えることは間違いありません。

まずは、試算表の提出を依頼してきた金融機関の担当者に、試算表が必要な理由を率直に聞いてみました。
回答は「保証協会に売上高の報告をするため」とのことでした。

よって、「試算表がまだ出来ていないため、売上高だけ集計して提出すればよいか」と確認するとそれでよいとのことです。何かを調べたいのではなく、報告が必要なので単純に仕事としてやっているという感じでした。

仮に試算表の提出が必須だという回答だった場合はどうするべきでしょうか。ありのままを提出し、個人的な支出に流用しなくてはならない理由があったならそれを説明し、理由がなければ真摯に反省し、決算までには個人的な支出分を会社に戻す努力をすることをお約束するのが正解だと思います。

試算表の提出(業績の報告)は金融機関との最良なコミュニケーションツールです。金融機関に対して負い目がある時は、試算表の提出を依頼してきた担当者に対して、「そんなことに対応している暇はない。」などと攻撃したり、不機嫌な態度をとったりする経営者もおられます。不安や保身から取ってしまう行動だと思いますが何のプラスにもなりません。

金融機関とは信頼関係を構築できないとお考えの経営者様も少なからずいらっしゃいますが、必ずしもそうではありません。もちろん、一朝一夕に構築できるものではありませんが、良いことだけでなく、悪いことも報告して相談することが関係構築の第一歩になります。

尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)