vol.386【経営コラム】ビジネスモデル俯瞰図の検証!
(毎週月曜日配信)経営編
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司
…ファイナンス機能の追加例!
〔※ビジネスモデル俯瞰図とは、ビジネス全体の構造や流れを把握し、事業の構造や事業の特徴、損益構造などをわかりやすく整理した図表のことを指します。〕
事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をその本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現したビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいときの着眼点を整理いたします。
■着眼点1:自社の商品やサービスを販売しやすくするために、ファイナンス機能を追加した事例を紹介します。
●例えば、ある製造卸販売事業者様の場合、その販売先候補や卸先候補に対して、その与信上の懸念から新規先の開拓が十分できていませんでした。このケースでは、商品力の問題よりも、販売するための与信力の判断または付与が問題になります。
新規顧客開発のためにファイナンス機能を付加することで、大きな売上アップを狙えます。
具体的には、
◆その1…クレジットの付与
新規販売先に対するクレジットを付与します。クレジット会社と提携して、与信上の懸念から新規取引を避けていた販売先に対しても営業を活性化できます。
◆その2…ファクタリングの付与
新規卸先に対してファクタリングを付与します。クレジット会社と提携して、与信上の懸念から新規取引を避けていた卸先に対しても営業を活性化できます。
クレジットやファクタリング等、商流を有する企業と金融会社との相性は抜群です。上手に提携してください。上記の企業様の場合、ファイナンス機能の付加で、10%以上の売上増を見込めます。
●例えば、事業者向けに原材料をネットで販売するネット販売会社が、その販売先に対して、自ら設立した金融会社を使ってファイナンス事業を行いました。月末締め翌月末払いの支払いサイトを、1か月伸ばす毎に1%の料率で金利を付与します。
支払いを2か月伸ばした時、月間購入額100万円に対して2%の金利が付与されます。このファイナンスは年率12%の金融商品です。この会社は、商材販売の利益に付加して、金融収益を計上することができます。また、自社商材の販売実績と、金融会社として確認できる個人情報を合わせて審査することで、優良債権として運用できています。
金融会社を自らが設立するのには相応の体力が必要です。このケースでも、金融会社とのアライアンスで代替えできます。
■商品やサービスに自信があれば、ファイナンスなどの付加機能の追加を検討してください。
日本の企業、特にメーカーは、その製品の単機能の性能を磨くことには優れているが、その製品の使われ方に対する全体設計が米国企業に比べて苦手だといわれることがあります。
自動車作りでは世界一であっても、新しい自動車社会の構想力ではグーグルに劣っているのかもしれません。
同様に、商品やサービス自体の性能や品質向上には熱心でも、そのサービスや商品を販売するための仕組み、ソリューションの構築は苦手かもしれません。
ビジネスモデル俯瞰図を確認するときは、サービスや商品だけではなく、その販売を補完するソリューション整備に着目することをお勧めします。
ここでご紹介したファイナンス機能の付加は、一つの有望な切り口です。
また、事業計画を作成するときには、過去のビジネスモデルを踏襲するのではなく、ビジネスモデル俯瞰図等を活用して、事業全体の事業立地の付加・転換など、事業自体をその本質から見直してください。
田中英司 (GPC-Tax本部会長・ 銀行融資プランナー協会代表理事)