vol.372【実践コラム】資本性ローンについて

(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広


…新規事業や事業再生に取り組む際に利用したい制度です

金融機関が最も重視している財務指標のひとつが「自己資本比率」です。
自己資本比率が高いという事は、他人資本(借入等)への依存度が低いという事ですので、それだけ経営が安定していると判断されます。

自己資本を増やす方法は2つです。「増資により資本金を増やす」もしくは「税引後利益を増やす」です。しかし、日本の中小企業は、代表者(一族)以外の第三者が株主となることが少ないため、資本金はあまり大きくなりません。また、満足な税引後利益を出し続けることも容易ではないため、多くの中小企業は自己資本が脆弱な状態にあります。

金融機関は、自己資本が脆弱な企業に対して積極的な融資は出来ません。よって金融庁は、中小企業の実情を考慮し、自己資本に関していくつかの解釈を認めています。例えば、自己資本が脆弱であっても、代表者の個人資産がある場合や、代表者個人からの借入金がある場合は、それを実質自己資本とみなして良いといった解釈です。そういった解釈のひとつに、「資本的劣後ローンの取扱」があります。

資本的劣後ローンとは長期一括返済型の借入です。種々の要件がありますが、実際は負債であるにも関わらず、金融庁はこの借入を実質自己資本とみなしても良いとしています。企業側にとっても、長期間返済義務のない資金が入ることで経営が安定するうえ、みなし自己資本が増えて財務内容が改善されます。

日本政策金融公庫国民生活事業が取扱っている代表的な制度を紹介します。

制度名:挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
利用限度:4,000万円
利率:決算の業績に応じて3区分の利率が適用(1%から6.2%)
融資期間:5年1カ月以上15年以内
返済方法:期限一括返済(利息は毎月払)
担保・保証人:無担保・無保証人

技術やノウハウ等に新規性のある新規開業者や足元の業績は黒字だが過去の赤字によって債務超過や実質債務超過に陥っている企業様にとっては最適な制度です。

利用にあたっては、事業計画書の策定が必要になります。ご相談ください。

尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)