vol.367【経営コラム】減収(売上減)を容認する計画を!

(毎週月曜日配信)経営編
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司


…筋の悪い売上は概ね薄利(赤字)です。

■増収(売上増)発想からの脱却!

事業計画を作る時には、売上は当然伸びるとする会社様が大半です。
例えば、今後5年間毎年売上を伸ばし、その中で原価と費用を賄いながらも営業利益を少しは増やす、このような計画が大半です。増収を前提にした計画です。計画書作成後は、売上の達成状況を第一義に確認しながら経営を行います。売上目標の達成のためには、原価や販管費の上昇も仕方ないと考えてしまうようです。この考え方は、時に売上至上主義を招きます。

■減収(売上減)を容認する計画を!

貴社が、上記のような考え方を長期間続けていたならば、一度発想を変えてみることをお薦めします。減収(売上減)を容認する考え方です。
例えば、次年度の計画を作る時に、売上は2%減じても良いとする一方、粗利益率は2%向上する目標を立てます。この時、ほとんどの会社様は減収&増益になります。減益にはなりません。売上を何としても死守する発想を捨てることができれば、筋の悪い売上を捨てることができます。経営が、会社が大きく変わります。

売上には筋の良い売上と筋の悪いそれがあります。言いかえると、無理なく立てた売上と、無理して立てたそれです。後者は概ね薄利(赤字)であり、時に大きなトラブルを招きます。
減収を容認することで、後者の売上を捨てることができます。

■以下のような仮説が生まれます。

『日本の企業は売上高確保、増収(売上増)にこだわり過ぎています。何が何でも売上高を確保しようとすると、売上高を確保するために多くの犠牲を払うことになります。利益を犠牲にした安易な値引きや安い値決めを招きます。利益に見合わない過大な広告コストを支払う羽目になります。採算を度外視した幅広い品ぞろえや長時間営業を行うようになります。顧客の過度な要求を受け入れてしまいます。売上至上主義は、分散症候群や安売り症候群を招く原因のひとつです。脱・売上至上主義、減収(売上減)を容認する経営に移行してください。』

■繁盛貧乏からの脱却を!

会社は、忙しければ相応に利益が出るはずです。【繁盛高収益状態】です。逆に、利益が出ていなければ暇なはずです。【閑散貧乏状態】です。ところが、少なくない中小企業は忙しいのに利益も出ていない状況に陥っています。【繁盛貧乏状態】です。ここに大きな疑問を持ってください。
筋の良い売上に付加して、筋の悪い売上を無理やり取りに行っていることが原因のひとつです。この不要な売上を排除するために、減収(売上減)を容認する経営を一時的に行うことは有効です。

言うまでもなく売上は重要です。2%の減収でも5年続けば10%売上が減じます。減収を容認する経営を長期間続けることは困難です。数年に一度、または、数年間に限定して、敢えて減収を容認する経営を導入してください。
今まで取り組んでいなかった会社様は、向こう数年間に限定して、敢えて減収を容認する事業計画を立案して執行してください。経営が、会社が大きく変わります。

田中英司 (GPC-Tax本部会長・ 銀行融資プランナー協会代表理事)