vol.363【経営コラム】間違えやすい経営常識18!

(毎週月曜日配信)経営編
GPC-Tax本部会長・銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司


…大企業の常識は、時に中小企業の非常識に当たることがあります。

何が正しいのか?大変難しいテーマです。
『対局にも真あり』とも言われます。それでも社長は日々多くの判断をくだしています。過去の経営判断の集積が現状であり、これからの判断の結果が未来の経営成績に反映されます。判断の精度が原因、経営成績が結果、タイムラグを経て明確な因果関係が生まれます。

社長は、何を基準に経営判断を行っているのでしょうか?理詰めで考えて判断する以外に方法はありません。常に自身の頭の中で考えを突き詰めて、論理に沿って判断すべきです。絶対にやってはいけないことは、曖昧な形で伝わってくる、無責任な世間の間違え常識を鵜呑みにすることです。

曖昧な形で伝わってくる無責任な世間の間違え常識の中には、疑問を投げかけたくなる内容も混ざっています。特に違和感を持つのは、大企業の常識と中小企業の常識の違いが勘案されていない内容です。大企業の常識は、時に中小企業の非常識に当たることがあります。

◆間違え常識3、◆間違え常識8や◆間違え常識14はその典型例です。

◆間違え常識1:収益性の良し悪しは、マネージメントやマーケティングで決まる。

⇒違います。その前に事業立地・ビジネスの型の良し悪しが重要です。飽和した事業立地で、収益力の低いビジネスの型で事業を行うことには限界があります。

◆間違え常識2:経営の生産性向上のためには、改善することだ。

⇒違います。止めること・絞ることです。

◆間違え常識3:マーケットインこそすべてだ。

⇒必ずしもそうではありません。(中小企業には)プロダクトアウトこそ重要です。ニッチマーケットを開拓するためには、仮説から始まるプロダクトアウトこそ重要です。    

◆間違え常識4:社長は、急ぎで重要なことに専念すべきだ。

⇒違います。社長の仕事は、急ぎでない重要なことへの対処です。

◆間違え常識5:売上こそ経営の肝だ。

⇒違います。多くの場合、利益の方が重要です。

◆間違え常識6:売れないので価格を下げる。

⇒違います。価格を売るための道具に使ってはいけません。売れるように価値を向上させてください。

◆間違え常識7:協業先を早く作りたい。

⇒違います。その前に自立することです。

◆間違え常識8:衆知の経営を行いたい。

⇒違います。小さな会社は社長の独断こそ正です。

◆間違え常識9:従業員に好かれたい。円満でいたい。

⇒違います。好かれる社長のいる会社は総じてうまく行っていません。

◆間違え常識10:社長が忙しい。

⇒違います。余計なことをし、コントロールできないことを考えているからです。

◆間違え常識11:従業員(会社)が忙しい。

⇒違います。マネージメントが雑なだけです。余計なことをさせています。

◆間違え常識12:十分な費用を費やして最高の管理を行うことが重要だ。

⇒違います。最適な管理を最小のコストで行うべきです。

◆間違え常識13:能力の限界まで出世させてあげたい。

⇒違います。能力の限界の手前に留めるべきです。

◆間違え常識14:お金は、お金が必要な時に借りる。

⇒違います。(中小企業は)お金は、借りられる時に借りられるだけ借りることです。

◆間違え常識15:借入れは少ない方が良い。

⇒違います。そうでないことも多いです。

◆間違え常識16:取引する銀行は大きな銀行が良い。

⇒違います。取引する銀行は分相応が良いはずです。

◆間違え常識17:現状の厳しさを強調して、金融機関に融資を依頼する。

⇒違います。返済できる根拠を書面で示して依頼するべきです。

◆間違え常識18:創業時、自己資金が底をついて資金が逼迫するタイミングで資金調達する。

⇒違います。デスバレーに突入する前の創業初期か、デスバレーを抜け切った黒字転換後しか調達できません。

経営判断は、とことん理詰めで行ってください。絶対にやってはいけないことは、曖昧な形で伝わってくる、無責任な世間の間違え常識を鵜呑みにすることです。上記の間違え常識に対するコメントも、本当は間違えかも知れません…とことん理詰めで考えてください。

田中英司 (GPC-Tax本部会長・ 銀行融資プランナー協会代表理事)