vol.343【経営コラム】創業者様相談事例(その3)
(毎週月曜日配信)経営編
GPC-Tax本部会長・一般社団法人銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司
〔Q&A〕その7:安売り経営は極めて難解です?
〔Q&A〕その8:創業時の事業計画書の注意点!絞り込みと地上戦から!
…前回号からのつづきです。
創業者様からの相談に対するQ&Aを整理します。
経営は百社百様です。故に、これが正解でこれは間違いなどと断定するつもりはありませんが、それでもある程度の方向性をお示しすることはできます。
以下、ご確認ください。
■〔Q&A〕その7:安売り経営は極めて難解です?
●(創業予定者G氏)
『ラーメン屋さんの開業準備中です。注意すべき点をアドバイスしてください。』
◎(当事務所担当者)
『貴店の特徴・差別化のポイントを教えてください。』
●(創業予定者G氏)
『おいしいラーメン屋さんはたくさんありますが、けっこう値段が高いように思います。安い値段、できればワンコイン(500円)以下で、おいしいラーメンをおなか一杯食べられる店にしたいです。』
◎(当事務所担当者)
『他店より安いのにおいしいラーメンを作れる理由を教えてください。』
●(創業予定者G氏)
『…沈黙…』
…つづく
※「良いものを安く」これは概念であって実体ではありません。
論拠なく「良いものを安く」提供したら、うまくいかなければ売れない、うまくいっても繁盛貧乏、いずれも成功ではありません。中小企業が低価格を狙う時、商売はほぼ失敗します。
やめましょう。
■〔Q&A〕その8:創業時の事業計画書の注意点!絞り込みと地上戦から!
45歳の創業予定者様からのご相談です。自己資金200万円、創業融資希望額400万円、創業資金の主な使途はWEB開発とWEBプロモーションです。WEB開発とプロモーション投資で300万円を予定しています。事業計画書も持参されました。
・WEB受注で初年度年商1,500万円、利益100万円。
・人を増やしながら3年後には年商6,000万円、利益500万円。
細かい与件もびっしり書かれた緻密な計画書です。
●(創業予定者H氏)
『社員教育のコンサルタントを始めます。私は、某大企業で教育担当をしていました。新入社員から幹部候補生まで、幅広く対応できます。実績をあげてきました。コンテンツもたくさん持っています。ホームページを立ち上げて受注します。』
◎(当事務所担当者)
『前職ルートでの受注は期待できますか?』
●(創業予定者H氏)
『前職のルートは使いたくないので、自前(WEB)で受注します。』
◎(当事務所担当者)
『教育と言うテーマは広いですが、教育の中では何が得意ですか?』
●(創業予定者H氏)
『特に限定したくありません。教育全般に自信があります。』
◎(当事務所担当者)
『営業対象はどんな先を想定していますか?』
●(創業予定者H氏)
『すべての業種が対象です。』
※実績も実力もありそうなH氏ですが、成功確率を更に高くするための施策について議論しました。成功確率を更に高めるためには…
◆1.サービスを限定するべきです。
◎(当事務所担当者)
『教育と言うテーマは広いですが、教育の中では何が得意ですか?』
●(創業予定者H氏)
『特に限定したくありません。教育全般に自信があります。』
※テーマ・分野の絞り込みが必要です。
◆2.営業対象を限定するべきです。
◎(当事務所担当者)
『営業対象はどんな先を想定していますか?』
●(創業予定者H氏)
『すべての業種が対象です。』
※営業対象の絞り込みが必要です。
◆3.空中戦の営業に打って出る前に、地上戦で勝負しませんか。
◎(当事務所担当者)
『前職ルートでの受注は期待できますか?』
●(創業予定者H氏)
『前職のルートは使いたくないので、自前(WEB)で受注します。』
※まずは、前職ルートをうまく活用した営業、縁故の営業から始めるべきです。
◆4.投資のバランスに注意
◎(当事務所担当者)
『WEB開発もWEBプロモーションも悪くありませんが、資本金200万円の会社が、このタイミングで300万円の投資を行いますか?確信はありますか?』
●(創業予定者H氏)『そうかもしれません。』
…つづく
事業計画書を作り直してもらっています。
1.教育分野の中の、本当に強いテーマに絞って、商品化してもらいます。
2.上記のテーマに合いそうな営業先に絞り込んだリストをまず100社探してもらいます。
3.縁故先企業を、30社探してもらいます。
4.1のテーマで、2を対象にしたWEBを低コストで開発します。
同時に足で受注に走ってもらいます。対象を限定したDM等も検討してもらいます。
新しい指針の事業計画でも、数値計画は当初と同程度狙えます。
足元から地道に攻めることは、決して遠回りではありません。
むしろ近道です。また、創業融資申請時には、新しい指針の方がはるかに高い評価を得られます。
『大きくなるためには、大きなマーケットを幅広い商品・サービスで攻めることが良い』と勘違いしている人は少なくありません。
これは、明らかな間違えです。
◎『大きくなりたいなら、敢えて絞り込んだマーケットを特化した商品・サービスで攻めるべき』と理解してください。
貴社は大丈夫ですか?再度確認してください。
次回号につづきます。
※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、クライアントに『お金の心配をできるだけしない経営を行ってもらう』ための新しい機能(=金融機関対応を含む財務の機能)を持つことを宣言いたします。我々は、『税理士』ではなく、『新・税理士』です。遠慮なくご相談ください。
田中英司 (GPC-Tax本部会長・ 銀行融資プランナー協会代表理事)