vol.289【実践コラム】中小企業庁の統計から見る倒産の原因と対処法
(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広
…財務面の強化により回避できた倒産もあるはずです
中小企業庁のホームページには、様々な調査の報告や統計が公表されており、経営のヒントにしたいものも多くあります。
今回は平成30年2月15日に公表された「原因別の倒産状況」について財務面から見ていきます。
◆中小企業庁ホームページより
http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/tousan/index.htm
統計を見ると、平成30年1月の倒産の件数は635件となっており、原因の内訳は以下のとおりです。
1位:販売不振 451件
2位:既往のしわよせ 72件
3位:連鎖倒産 31件
4位:過小資本 24件
5位:放漫経営 20件
6位:売掛金回収難等その他 37件
最も多い倒産の原因は販売不振です。最後まで顧客のニーズを満たせる商品やサービスを提供できなければ、倒産は免れませんが、資金調達により時間を稼ぐことはできます。もう少し時間があれば上手くいったかもしれない・・・となる前に、可能な限りの資金調達をしておくことをおすすめします。
次に多い倒産の原因は既往のしわよせです。過去からの不振が徐々に積みあがって倒産に至ったというケースです。事業のライフサイクルが衰退期に入ると、徐々に売上高や利益が減少し始めます。急激に落ち込めば切実な問題として認識できますが、単年度の落ち込みが数%程度だと、「来年こそは頑張ろう!」で終わらせてしまいがちです。数%の落ち込みでも、それが5
年続けば数十%になりますので、気がついた時には対処のしようがない状況になっています。事業のライフサイクルによる落ち込みは、分かっていても対処が難しい問題ですが、財務分析等により、自社の状況を的確に把握しておけば、早い段階から切実な問題として認識することができます。
原因の4位となっている過小資本も、財務が貢献できる可能性があります。過小資本の問題は、やろうとしている事業と必要な資金の読み違えです。事業を軌道に乗せるために必要な資金を読み違えたり、自社の資金調達力を読み違えたりすると、必ず途中で資金ショートを起こします。財務の知識があれば、読み違える幅は必ず小さくできます。
一定の売上が立っているにも関わらず、財務面の不足により倒産に至っているケースは少なくないように感じます。社長様が考えておられる事業計画を財務面から検証させていただきます。是非、ご相談ください。
尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)