vol.229【経営コラム】低粗利益率のビジネスは、小資本企業には不向きです
(毎週月曜日配信)経営編
GPC-Tax本部会長・一般社団法人銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司
…粗利益率の意味は、ビジネスのおける関与の度合いと解釈できます。
■粗利益率の低いビジネス、高いビジネスは…
○最も粗利益率の低いビジネスは金融業です。
※金利を粗利益率と並列で表現することは少々乱暴ですが、ここではあえてそうさせていただきます。
数%、住宅ローンには1%を割り込む金利の商品があります。
大きな資金を極めて低コストで調達できて、長期間寝かせることができる事業背景があって、はじめて金融業は成立します。
○次に粗利益率の低い業態は商社です。
その与信力や保有する商圏を背景に、大きな取引の間に入って、10%以下のマージンを収入源にします。安定した資本力・資金力があって、はじめて商社ビジネスができます。
※商社のビジネスモデルは大きく変化しています。現時点では、事業への直接投資を行って、より多くのリスクとリターンをとる形態が主流です。
○次に粗利益率が低いのは流通業でしょうか。
商品を作るメーカーがあって、そのメーカーから商品を仕入れて売ります。製造に関する利益はメーカーがシェアします。販売に関する利益が流通業態の利益になります。粗利益率は、30%~50%弱でしょうか。
(…中略)
○最も粗利益率の高いビジネスは、コンテンツやノウハウを提供するビジネスです。
仕入れはありません。自分たちの知恵で価値を創造して、それを販売します。
■粗利益率は外部との関わり度合いで決まります。
粗利益率20%、これはエンドユーザーに届くまでの役務・価値の内の、80%は自社以外が担っている・生み出していることを意味します。
同様に、粗利益率50%はその関わり度合いが50%、粗利益率100%はそれが100%であることを意味します。
■粗利益率100%が必ずしも優ではありません。
粗利益率100%とは、ユーザーに商品やサービスを届けるまでに、他人の力を借りないことを意味します。良く言えば自前主義、悪く言えば協業ができない、故に、一般論として粗利益率100%のビジネスは大きくなりません。
■低粗利益率のビジネスは、小資本企業には不向きです。
低粗利益率のビジネスは、大資本家向けです。他人の知恵と、自身の資本力・資金力をうまく活用して利益を上げます。金融業や商社がこれに該当します。
一方、小さな資本しか持ち合わせていない中小・零細企業や独立開業者は、「金は無いけど知恵を使う」ビジネスを行っていかねばなりません。その多くを他人の力に頼る低粗利益率ビジネスで成功することはできません。極めて難解です。
■小資本企業にとっての適正な粗利益率とは…
○感覚論で恐縮ですが…40%以上を目指してもらいたいと思っています。
◆(相談者様)
ネット通販で商品を仕入れて売ります。自己資金300万円と借入れ600万円で事業を始めます。想定する粗利益率は20%ぐらいです。これ以上の粗利益率をとると、売れないように思います。
◇(当方)
事業資金総額900万円(内自己資金300万円)、粗利益率20%で資金繰り計画・利益計画を作るとこうなります。
◆(相談者様)
そんなに厳しくなりますか。
◇(当方)
そうです。粗利益率を20%以上設定できないと考える前に、粗利益率40%を設定しても売れる商品開発(商品発掘)に力を入れませんか?
○仕入れの支払いサイトや資金の回収サイトにもよりますが、総じて低粗利益率のビジネスは資金の動きが忙しくなります。また、20の粗利益を得るために、100の回収リスクを背負うことにもなります。経営が複雑で難解になります。
小資本企業が始める低粗利益率ビジネスは、成功の確率を最初から大きく引き下げてしまっていることをご認識ください。この機会にご一考ください。
※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、クライアントに『お金の心配をできるだけしない経営を行ってもらう』ための新しい機能(=金融機関対応を含む財務の機能)を持つことを宣言いたします。我々は、『税理士』ではなく、『新・税理士』です。遠慮なくご相談ください。
田中英司 (GPC-Tax本部会長・ 一般社団法人銀行融資プランナー協会代表理事)