vol.106【実践コラム】経営の再チャレンジについて
(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広
会社倒産後の2人の経営者のケースをご紹介します
会社を倒産させた後、配偶者や知人を代表として新会社を設立し、継続して事業を行っているケースをお見受けします。(法律家ではありませんので違法性についての議論は避けたいと思います。)新会社で、新たな融資を受けられたケースとそうでないケースを比較して検証します。
A社があります。ある倒産した会社の社長様の奥様が設立しました。
倒産した会社と同業です。倒産した会社は、保証協会、日本政策金融公庫の双方に迷惑をかけています。
B社があります。あるコンサルタントの方が設立しました。コンサルティング事業を別で行いながら、兼務でB社の社長を務めています。
A社、B社ともに保証協会の創業融資はNGでしたが、A社は日本政策金融公庫の創業融資を受けることができました。B社は日本政策金融公庫もNGです。
A社の実態から説明します。元社長は現在も従業員として現場を切り盛りしていますが、A社の謄本や決算書類のどこにも元社長の名前は出てきません。
実際、経営の一切を奥様にお任せしています。経営の経験の無い奥様が、勉強会に参加したりしながら、一生懸命社長業をやっておられます。
B社の実態をご説明します。実際に経営をしているのは別の役員の方です。その方は、ある倒産した会社の経営者でした。倒産はしてしまいましたが、
経営者としての経験と実績を持っておられます。個人的な法的整理を行わず保証協会と継続協議中です。
中小企業における最大の経営資源は経営者です。特に創業融資は経営者のキャリアや事業に対する思い入れの強さなどが重要視されます。A社の社長様は実態のとおり、その気概が伝わりました。B社の実質経営者様は十分な素養を持ち合わせておられますが、残念ながら表に出てくることは出来ません。代理の社長様が面接を受けましたが、その点において経営に対する覚悟の薄さがにじみ出てしまいます。
一度でも金融機関に迷惑をかけてしまうと、再度経営者として借入をすることは制度上困難です。また、B社のように代理の経営者を立てても、実態と違えば金融機関の審査ではねられてしまいます。経営に失敗した経験が、逆に経営力の向上につながるケースもあります。しかし、現状ではA社のように経営から退くしか方法が無いのが残念です。一度経営に失敗した経営者が、経営に再チャレンジできる環境整備に期待したいところです。
尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)