◆創業融資事例(日本政策金融公庫)
今年から
日本政策金融公庫の創業融資の自己資金要件が緩和されました。
従来は総事業費の3分の1以上の自己資金を有していることが条件でしたが、現在は10分の1に大きく緩和されています。しかし、実際の運用面では、100万円の自己資金で900万円の創業融資を受けられる確率は低く、従来どおり3分の1の自己資金が目安となっているようです。
この様な状況下において新基準で融資を受けられたケースをご紹介します。
弊所にて関与させて頂いた飲食店の独立開業案件です。300万円の自己資金で1,000万円の創業融資を受けました。
ご相談の経緯
弊所関与先であるM社に勤務するKさんから、独立開業のご相談がありました。
M社は飲食店を複数店舗経営しており、KさんはS店の店長を務めています。
「500万円の貯蓄はあるが、全額を事業につぎ込むのは不安がある。300万円だけ事業資金とし残りは融資を受けたい。いくらぐらい融資を受けられそうか?」との質問でした。
Kさんが当初考えていた総事業費は、運転資金も含めて1,500万円でした。よって1,200万円が必要調達額となります。
新基準に照らし合わせた表面上の借入可能額は2,700万円となりますが、実態は従来どおり自己資金の2倍程度までしか融資が出ないケースが殆どです。
実情をお伝えし、借入金を600万円に抑え、自己資金300万円とあわせて900万円で事業構想を練り直してみてはとご提案しました。Kさんは構想を練り直しましたが、結論は、やはり900万円では満足のいく店舗が作れないとのことでした。
そもそも、
なぜ自己資金の要件があるのでしょうか?いくつか理由はありますが、売上が本当に立つかどうかも分からない新規事業に対して、返済が必要な借入金よりも、返済不要な自己資金を充てた方が安全だからです。では、既に売上や利益の実績がある店舗の買収ならばどうでしょう。
新規事業に比べて各段に事業リスクは下がります。
自己資金の必要性も低くなります。
K氏と相談し、新店舗ではなく、K氏が現在店長を務める店舗を買い取る計画に切り替えました。
元々3,000万円程度の資金を投入している店舗で、K氏はオープン当初から10年近く店長を務めています。功労者であるK氏の申し出に対し、社長は前向きに検討してくださいました。
結果、店舗設備及び権利を720万円で売却してもらえることになりました。
最終的な投資及び調達の計画
【投資計画】
- 店舗敷金 180万円
- 店舗買収資金 720万円
- 店舗改装費 150万円
- 運転資金 250万円
- 投資合計 1,300万円
【調達計画】
- 自己資金 300万円
- 借入 1,000万円
- 調達合計 1,300万円
日本政策金融公庫との面談時に、やはり、総事業費に対する自己資金の少なさが指摘されました。
対象店舗の過去2期分の損益実績を提出し、1,000万円の返済が十分に可能であることを説明した結果、自己資金の3倍強となる1,000万円の融資を受けることに成功しました。