vol.541【実践コラム】中小企業の財務指針について
…日頃から銀行とコミュニケーションをとりましょう。
(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広
中小企業の財務指針は「融資は借りられる時に借りられるだけ借りておく」そして「キャッシュポジションを高くとる」ことが最善だと考えています。
融資は借りられる時に借りられるだけ借りておく方が良い理由は、小さな会社はいつでも銀行から融資を受けられる訳ではないからです。今日銀行が借してくれると言っても、半年後も同様に貸してくれる保証はありません。銀行が貸してくれると言っているうちに借りておくことが大切です。
次にキャッシュポジションを高くした方が良い理由は、「キャッシュが切れない限り倒産することはない」「キャッシュに余裕があれば不測の事態が起きても落ち着いて対処できる」「キャッシュがあれば千載一遇のビジネスチャンスを逃さない」ためです。たとえキャッシュの中身が借入だったとしても、キャッシュをたくさん持っている方が倒産の確率は下がります。
借入を嫌う経営者も多いですが、そこには、困った時だけ銀行に頼ればよいという錯覚があります。銀行はこちらの都合で融資をしてくれませんので、ピンチに陥った時に融資を頼みにいくのではなく、調子が良い時に最大限融資を受けておいて、ピンチに陥ったら返済を待ってもらうのが一番確実な方法です。
借入を活用して手元キャッシュを厚くすることの重要性にご賛同いただけたならば、次は、どうすれば銀行から最大限の融資を受けられるかという課題に気づかれたと思います。銀行から最大限の融資を受ける方法はテクニカルではありません。融資の提案を積極的に持ってきてもらえる関係を地道に構築することです。
具体的には、毎月試算表や資金繰り表を作成し、定期的に銀行に提出することが最低限必要です。多くの中小企業は困った時(お金を借りたい時)にしか財務諸表を提出しませんので銀行との関係は深まりません。試算表や資金繰り表は銀行との関係を深めることができるコミュニケーションツールです。試算表や資金繰り表を提出したいと言えば銀行は必ず時間を取ってくれます。日頃から銀行とコミュニケーションをとることを心がけましょう。
尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)