vol.229【実践コラム】金融機関と対等に接するために
(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広
…金融財務の知識を身につけることが必須です
もし、銀行の担当者から、「融資を引き揚げる。」と言われたら、平常心でいられるでしょうか。
残念ながら、相手に知識がないと見れば、このような事を平気で口走る銀行員がいることも事実です。
先日あったA社様の事例です。業績は大変良好ですが、急激に売上が伸びたため資金繰りが苦しくなり、あるメガバンクから10回払いのプロパー融資1,000万円と保証協会の保証付き融資2,000万円を受けました。しかし、それだけでは資金が足りないため、「もっと資金を調達したい。」とのことでご相談に来られました。
進行期の業績が伸びていたため、決算を締めた後の方が大きく資金調達を行えると判断し、ある地銀にアプローチして、決算後に、保証協会とプロパーの合算で、最大限の融資を検討してもらうよう段取りを進めていました。
決算が出てから数日後、A社の社長様より、「メガバンクから6,000万円の保証付き融資の提案を受けた。」との連絡がありました。業績面から見て、それぐらいの保証は出るだろうと考えており、地銀とは、そこからさらにプロパーをどれぐらい積めるかを検討してもらっていましたので、社長様には、メガバンクへの回答は一旦ペンディング、もしくは追加でプロパーを検討してもらえるかを聞いていただくよう依頼しました。
翌日社長様から連絡があり、メガバンクに話したところ、「まずは保証付き融資を借りて欲しい。それからプロパー融資は検討する。また、最初に融資をしたことを評価して欲しいと考えており、当行で借りてもらえないなら、今貸している融資を引き揚げる可能性もある。」と言われたとのことでした。
A社の社長様は、創業以来数年間、自己資金だけで経営をしてこられ、昨年の公庫とメガバンクの借入が初めての借入でした。
金融機関対応には慣れていませんので、このようなことを言われれば、当然驚いてしまいます。
このような話は、お客様経由でしばしばお聞きします。本件に限らずですが、延滞もなく契約通り履行している融資を引き揚げられる可能性はありません。本当につまらない脅しですが、金融機関取引に慣れていない社長様であれば従ってしまいます。
金融機関取引に慣れた社長様でも、業績が悪化した局面でこのような事を言われれば必ず動揺します。
もちろん、このような銀行員はほんの一握りです。銀行員全員を毛嫌いして、いたずらに敵対意識を持って応対することは得策ではありません。このような銀行員に出会った時の対処方法は、やはり、金融財務の知識を身につけるか、知識を有した相談相手を持ち、知識で対抗するしかありません。
尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)