◆キャッシュポジションを高く取ることで倒産を回避した事例
当事務所では、
中小・小規模事業者のファイナンス戦略「借りられる時に借りられるだけ借りておくこと」を推奨しておりますが、今回は実例に基づいてその重要性を解説致します。
倒産を回避した事例!
A社様との出会いは数年前、
会社を設立するときに遡ります。会社設立のお手伝いをさせて頂くと同時に税務顧問契約を頂戴しました。その後、順調に業績を伸ばし、銀行と手形割引の取引を開始するにあたり、財務部長の代行サービスも追加でご依頼頂きました。
資金繰りに困ることなく経営は出来ていましたが、
手形割引をしながら、毎月末の平均預金残高は2,000万円程度を維持しており、余裕があるとは言わないまでも、資金繰りに困ることなく経営は出来ていました。しかしながら売上は、ベース売上よりもスポット売上の割合が大きいため、社長様は、売上が急に落ちるのではないかという不安を、常々口にしておられました。
新規融資取引を開始
売上が極端に下がり資金繰りに支障をきたしたとき、A社のように設立から日の浅い企業が、いきなり銀行の門をたたいてもすぐには対応してもらえません。目先の資金に困っている訳ではありませんでしたが、手元資金に余裕を持たせるため、また金融機関の窓口を広げるため、現在手形割引をしている銀行以外の金融機関2行と、合計1,500万円の新規融資取引を開始しました。
その後も順調に業績を伸ばし、
2期目の決算は売上高4億円を計上しました。2期目の決算を確認できたタイミングで、手形割引先の金融機関が7,000万円の融資提案を持ってきました。他行にシェアを奪われたくないという思いでしょうが、想定を超える金額でしたので少し悩みました。
当該融資を受け入れた場合、A社のキャッシュポジションは1億円程度になります。
月商の約3倍ですので、さすがに不要な資金かもしれません。
しかし、金利は1%を切る提案でしたので、5年の金利総額は約250万円、1年あたり50万円、1か月あたり約4万円です。
いざ何かあった時に融資を受けられないという底の読めないリスクと、毎月4万円のコストが増えるという明確なリスクの比較です。
社長様とも相談した結果、「銀行融資は借りられる時に借りられるだけ借りておく」という原則に従って融資を受け入れることにしました。
それから半年ほど経過した時、
A社の最大の取引先からクレームがあり、取引停止処分を受けるという事態が発生しました。
それまで毎月2,000万円程度の売上があった取引がストップし、先方内での審議の結果によっては、将来に渡って取引の再開が出来なくなるということでした。
結果的には3か月で取引を再開することが出来たのですが、約6,000万円の売上を失いました。
メインの取引先を失うかもしれないという有事に遭遇した時、役に立ったのはキャッシュです。
問題が発生した時、手元キャッシュは約1億円ありましたので、対策を練るための時間的な猶予が十分に取れました。
もし、手元キャッシュ2,000万円で資金繰りを組んでいたら、資金はあっという間に底をついていたはずです。
社長様も「慌てることなく冷静に対処できた。あの時お金を借りておいて本当に良かった。」と喜んでおられました。
「借りられる時に借りられるだけ借りておくこと」の真意は、
悪戯な借金の推奨ではありません。無借金が望ましいのは当然のことですが、中小・小規模事業者は信用力が低く、問題が起きればたちまち融資を受けられなくなるという現実があります。
そのような事態を回避するための自己防衛策として、キャッシュをより多く手元に置いて経営することを推奨しています。
2,000万円を持って経営するのと、1億円を持って経営するのでは、安心感が格段に違います。
当社の場合、その安心を得るのに必要なコストは月4万円の金利でした。
高いでしょうか。
キャッシュポジションを高く維持するためには、銀行対応に専任であたる財務部長が役に立ちます。
是非、当事務所にご依頼ください。