vol.648【実践コラム】創業融資の重要性

…創業時こそ融資のチャンス。タイミングを逃さないようにしましょう。

(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広

先日、スクールビジネスを始めて1年の社長様から相談を受けました。「日本政策金融公庫に融資を申し込んだが断られた。このままでは資金が枯渇してしまう」というものです。
詳しく伺うと、創業時は自己資金だけで十分と考え、創業融資を受けていませんでした。しかし、1年経った今も単月黒字化できておらず、役員報酬もほとんど取れていない状況でした。

■ 創業時こそ融資のチャンス

残念ながら赤字で資金繰りが苦しい状況ほど、資金調達は難しくなります。創業時であれば、将来の「計画」だけで融資を受けられる可能性が高いのですが、1年経過し上手くいかなかった「結果」が出ている場合、日本政策金融公庫からも保証協会付き融資も受けることは困難になります。

■ 十分な資金準備の重要性

中小企業庁の統計データに基づくと、法人の場合、起業から3年後の生存率は約62.8%となります。つまり、約37.2%の企業が3年以内に廃業していることになります。これは決して低い数字ではありませんが、適切な資金準備と経営計画があれば、さらに生存率を高められる可能性があります。

■ 創業後の資金管理

創業後のお金の使い方も重要です。前述の社長様の場合、人件費、福利厚生費、広告費、接待交際費が売上規模とアンバランスでした。従業員のモチベーションアップや広告宣伝の重要性は理解できますが、資金が枯渇すれば事業継続が不可能になります。
固定費を抑え、できるだけお金を減らさない工夫が必要です。
損益分岐点を下げる努力が、経営の安定化につながります。

■ 日本政策金融公庫の活用

日本政策金融公庫は、新設企業向けに低金利で融資を提供しています。特に「新規開業資金」は、創業時に利用しやすく、他の金融機関からの信用向上にもつながります。申請時には、綿密な創業計画書と資金繰り表を準備し、面談で事業への熱意を伝えることが重要です。

■ まとめ

創業予定の方、創業後間もない方で、まだ創業融資を受けていない方は、早い段階で専門家に相談することをお勧めします。
十分な資金準備と適切な資金管理が、事業成功の鍵となります。
自己資金だけでなく、創業融資もしっかり受けて、十分な資金を持って独立することが、成功への近道です。

尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)